可燃ごみを受入・圧縮し、大型車両で搬出することで輸送効率化とコストダウン、CO2削減を実現する「ごみ中継施設」。鹿嶋可燃ごみ中継センター(当社プロジェクト名:鹿嶋中継施設)では地域収集からの搬入とともに、市民がごみを直接施設に持ち込む風習が根付いており、特定の時期には持ち込み車両が非常に多くなるという地域特性が課題に。地域収集車両と市民の持ち込み車両の動線を分け、いかに滞留させず安全に受け入れ・処理を行うかが最大のテーマとなった難関プロジェクトです。
産機システム事業部
環境システム本部
エンジニアリング部
S.T.
当時入社25年目
産機システム事業部
環境システム本部
営業部
Y.S.
当時入社22年目
10年越しの提案活動の始まり。
「20秒に1台」の市民の持ち込み車両の動線確保と安全性の保持が課題。

私たちが担当したのは、茨城県鹿島地方事務組合の可燃ごみ中継施設建設プロジェクトです。これは、焼却施設のように絶対不可欠ではないものの、ごみを効率よく積み替えて焼却場に運ぶことでCO2削減など環境負荷の低減に貢献する、非常に重要なインフラ施設です。

鹿島地方事務組合で「新しいごみ焼却場ができる」という情報を得てすぐに、焼却施設の計画段階から営業のY.S.が動きました。
地図を見て「ここに中継施設があれば効率的にごみを運搬できる」とあたりをつけました。入札の10年くらい前ですね。まずはお客様に中継施設の必要性を理解いただくことが重要で「小さい車で何回も運ぶより、大型車に積み換えて運ぶほうがトータルコストも下がるし、CO2削減にもなる」といったメリットをアピールしました。そしてお客様が要望していた、市民が安全かつ快適にごみを持ち込める施設とするため、車両の動線や施設レイアウトに配慮し、この場所に最も適したオーダーメードの中継施設を提案しました。いかにニーズを引き出すか、お客様との信頼関係を構築するか、ここが営業職としての醍醐味です。その後、提案内容を審査されて入札となりました。
この地域の特性として、1日50台を超える地域収集車両に加えて、市民の持ち込み車両も大量に受け入れる必要がありました。一般的に同規模の施設における持ち込み車両台数は1日100台程度ですが、この地域では1日700台から多い日には1200台に及びます。単純に計算しても「20秒に1台」の車両を処理しなければ大渋滞が発生してしまうため、地域収集車両と市民の持ち込み車両が安全に走行できるスムーズな動線を確保することが絶対条件でした。我々の使命は、あくまで使いやすく安全なプラントをご提案することです。どういうレイアウトにすれば効率的に安全に稼働できるかという点に注力しました。同時に建設コストの削減や、搬出フローの確立も進めました。
工事スタート寸前、新たに見つかった障害物。
絶望的な気持ちで何十枚もの図面の描き直しから。

特殊な要素が多い案件で、さまざまな条件に配慮しながら設計に入ったときに、とんでもないことが発覚しました。なんと以前この場所に建っていた旧施設の基礎部分の杭が、敷地内に大量に残っていることがわかったのです。

お客様からは「すべての杭を撤去することはできないか」と言われましたが、予算の関係で全撤去は難しい状況でした。かといって放置するとプロジェクトが前に進まない。「物理的、予算的制約があるなかでどう設計するのか」と、S.T.とは激論を幾度も交わしましたね。最終的には、お客様に「予算内で実現するには、この条件で進めるのがベストです」とご納得いただいたうえで、S.T.には「抜く杭の数が最も少なくなるレイアウトをひねり出してくれ」と、無茶なお願いをしました。結果的に、建物を建てる部分だけ杭を抜いてレイアウトを考え直すことになったのです。
それまでに何案もレイアウトを作っていましたから、ほぼイチからやり直すことになり絶望的な気持ちになりましたね。予算の上限、地中に埋まった障害物の制約、市民の持ち込み車両の安全な動線を確保するというお客様の要望…どれも妥協できない条件の中で、がんじがらめの状態でした。「杭を避けつつ、機能的な建物を配置する」というパズルのような難題に直面し、建屋はもちろん、車両のごみ量を計る計量機の位置も杭が少ないところを探りながら決めていく難しさがありました。図面を何十枚も描き直しては白紙撤回する、そんなことの繰り返しの日々。最終的に「建物をレイアウトできる場所」を限定し、条件をクリアにして決めていきました。
S.T.が難題に挑戦し、ようやくレイアウトが決まって着工に漕ぎ着けました。ところが着工後も問題が発生しました。掘削工事を進める中で杭だけでなく旧施設の基礎の一部が地中に残っていることが判明。また、海に近い立地のため想定以上の湧水が溢れたのです。旧施設の撤去と水を止めるための工事が必要となり、工期は3ヵ月ほど延長しました。
新明和ならではの「事業部間シナジー」による技術力。次世代への技の継承も。

技術面ではAIを使った安全対策を取り入れ、省人化と安全性アップを図りました。当社は特装車事業部やパーキングシステム事業部の実績がありますから、そこで培った技術やセンサーの情報などを共有して活用しています。またごみを搬出する大型車も自社の特装車事業部の製品なので、車両と施設の最適なマッチングについて共同検討も行いました。各事業部の技術を結集して総合力を発揮できるのは当社の強みです。

営業部門は入札直前から、設計部門も実施設計の段階から、それぞれ若手社員をフロントに立たせて進めました。設計は入社6〜7年目、営業は中途入社2年目です。
ごみ中継施設は一つひとつオーダーメードで同じものはありません。しかも10年スパンの仕事ですから、今回を逃すと次はいつ経験できるかわからない。若手がスキルアップできるように、彼らにチャンスを与えようとY.S.と話し合って決断しました。
もちろん私たち二人は状況を把握して共有し、彼らが失敗してダメージを負わないようにケアしつつ、「ここまでは若手に任せよう」と黒子に徹しました。そうするうちに彼らもお客様から信頼されて、難題の多いプロジェクトを無事に進めることができました。
「こっちでお客様に依頼しておくから、そっちへ問い合わせがいったらこう答えてね」といった裏の根回しや誘導はちょこちょこしてましたね(笑)。
かつては自分たちも同じように先輩から裏でバックアップして育ててもらったんだと思います。その時は気づかなかったけれど、いま思えばそういうことが多々ありました。「恩送り」ですね。いつか気づいてくれることを期待したいです(笑)。
業務車両と一般車両の分離に成功。
無事に稼働する姿は、まるで「我が子を見るかのよう」。
実施設計では基本的な対応を若手に任せるようにして、必要に応じてサポートしていました。つい自分でやりたくなる気持ちを抑え、次を担う若手に経験を積ませることができたのは自身の立ち位置の変化かなと感じます。工事中は更地から鉄骨が建っていくのをずっと見ていましたが、運用面は実際にやってみないと分からないところがあるので、稼働するまではやはり不安もありました。実際に中継施設の運営が始まって、一般車両が渋滞せずにうまく流れているのを確認できた時は「あぁ、よかった」と心から安堵しました。


ごみ処理施設は、普段はあまり目に付かない施設ですが、市民の暮らしを支える大切なインフラです。小学生の社会科の授業にもごみ処理施設の見学が組み込まれていて、環境への貢献度の高い施設という認識が広まっています。市町村にとって一大プロジェクトとなる公共事業に参画できたことは大きなやりがいでした。完成した施設を目の当たりにしたときは、「我が子を見るような」感覚でした。しかも長く使われて地図にも残る仕事ですから、子どもにも「これはお父ちゃんたちがつくったんだよ」と胸を張って言えます。
過疎化、人材不足、高齢化、自治体の予算不足…など、ごみ処理の環境には課題が山積しています。今後も中継施設の必要性が高まっていくことが予想されるなかで、省人化に対応した施設を目指し、AIを活用した自動化・無人化設備を開発していきたいと思っています。
私の夢は、現在35都道府県に納入されている当社の環境プラントが、いずれは47都道府県の全てに納入されることです。そして今回のプロジェクトで経験を積んだ後輩たちが、次の10年後のプロジェクトでまた次世代を育てていってくれることを期待しています。