Project Storyプロジェクトストーリー

PROJECT01 / 特装車事業部

特殊な積荷を運ぶ
「天蓋付ダンプ」製造プロジェクト。

新明和の「ダンプトラック」は、1949年の第1号誕生以来、技術革新を続け、幅広い用途に対応する製品を提供しています。さまざまな種類のあるダンプの中でも「天蓋(てんがい)付ダンプ」は、水濡れを厳禁とする積荷や、外部に漏れてはいけない積荷を運ぶための特殊車両で、二人が手掛けたのは、降雪地域で焼却灰を運搬するという特殊なオーダーでした。このプロジェクトでは、使用用途、過酷な環境への対応、誤操作を防止する自動制御、そしてもちろんですが、公道を走行するための法規制の遵守が求められました。「仕様、法規、価格、納期」といったさまざまな要素を調整し、顧客の理想を形にした「オーダーメードの一台」が完成するまでの経緯を紹介します。

Member

特装車事業部
佐野工場
設計部

M.K.

当時入社14年目

本プロジェクトにおける役割
詳細設計・安全制御・法規制対応

特装車事業部
営業本部
東北支店

M.D.

当時入社16年目

本プロジェクトにおける役割
仕様提案、仕様・法規・価格・納期管理
  • ※記事の記載内容は、インタビュー取材時点のものとなります。

01プロジェクトのはじまり

降雪地で焼却灰を運ぶという特殊なオーダーを実現する

  • ― 大型特殊ダンプは一台一台オーダーメードということですが、今回のオーダーを教えてください
  • M.K.

    ダンプトラックにはさまざまなニーズがあります。積むものによって種類は多岐に渡り、お客様の仕事内容によって必要な機能や形、積載量などが異なります。また、走行装置部分(いわゆるシャシ)も多種多様なため、それらに合わせてカスタマイズします。

  • M.D.

    ダンプトラックは多様です。一般的な分類としては「土砂等を運搬するダンプ」と「土砂等以外を運搬するダンプ」の2つに分かれますが、トレーラーダンプや構内で使用する構内専用ダンプといった特殊なものも含め、幅広いラインアップを製造しています。そういった中で今回のオーダーは、焼却灰を運ぶダンプでした。積み荷の腐食性から、ボデーの材質はステンレスを使用し、灰が舞い上がったり水が入ったりしないように、箱の上に蓋が付いた「天蓋付ダンプ」になります。

  • M.K.

    「天蓋付ダンプ」も、蓋が付いていればいいというものではなく、細かいところが一台ずつ違っています。例えば、蓋の種類・形状・材質が用途によって違いますし、蓋の取付方法についても水平にせず傾きをつけて水や雪を落ちやすくしたり、屋内での積み下ろしを考慮し、建物内の高さにサイズを合わせたりします。また荷台や部品の素材もステンレス、アルミ、鉄…どの材料にするのか、選択肢は極めて多くあります。

  • M.D.

    「ハシゴのサイズと取り付ける高さは?」「フックの位置は?」「ライトの種類は?」…と本当に細部まで確認が必要で、営業からの的確な指示が必要とされます。

  • M.K.

    私たち営業はそうした細かなご要望をお客様に確認し、設計に伝え、仕様を決めていきます。そういった中では、お客様が必要とされている仕様を、これまでの経験をもとにこちらから提案することも重要です。ユーザーの方々にとって共通する悩みごとは多いですからね。お客様との打ち合わせで決まったことをその意図まで含めて丁寧に設計者とコミュニケーションを図り、お客様が安全かつ効率的に仕事ができるような仕様を提案することが最も重要なミッションです。

02課題への取り組み

パズルを完成させるべく、営業と設計者が知恵を絞る。

  • ― ダンプを使用する環境面や操作性など、さまざまな制約や条件に苦労されたと伺いました。
  • M.D.

    まず、場所が降雪地であるということ。冬場は安全の為に凍結防止剤(塩化カルシウム)が道路に撒かれるのですが、これは道路を走行する車両にとっては腐食性が高く、厳しい環境となります。お客様からは「とにかく錆びないようにしてほしい」と言われました。そこでステンレスを使うことを提案しました。コストは上がりますが耐久性も上がります。さらには車体の隙間に凍結防止剤を含んだ水や泥が入りにくくするようなゴムのカバー等を取り付ける加工を施すとともに、防錆(ぼうせい)塗装を提案しました。黒い防錆塗料を車体の下回りに塗って、錆を防止するものです。

  • M.K.

    焼却灰はアルカリ性なので腐食性があり、鉄製のボデー(荷箱)ではすぐに錆びてしまうため、ステンレスで製作する必要があります。また、水分を含むと発熱やガスが発生する場合もあり、ボデーの上には天蓋(蓋)を取り付ける必要があるのです。天蓋はボデー上部前方部に取り付けられたモーターを使って左右に開閉するようになっています。さらには、天蓋の四方と左右蓋の合わせ目にはパッキンを付けて、上部から水等が入らないようにしています。
    右側の蓋が左側の上に被さる仕組みになっており、開閉は運転席からリモートで操作しますが、もしドライバーが誤って「左」から先に開けようとすると、モーターや蓋が破損してしまいます。そこで「まず右側が開き、数秒待ってから左側が開く」というインターロック(制御システム)を組み込みました。ただ鉄の箱を作るのではなく、ドライバーの誤操作による破損リスクをシステムで防ぐということも設計の重要な役割です。
    まだ形になっていない要望に対して図面を描いていく仕事だからこそ、最終的に形になった時にお客様が「これいいね!」と喜んでくれるよう、イメージのズレが生じないように設計することを一番に気をつけていますね。

  • M.D.

    もうひとつ大きな課題が「積載量」です。お客様は最大積載量を重視されます。公道を走行する車両は、車格ごとに車両総重量(車両全体の重さ)の上限が決まっているため、要望どおりに機能を付帯し、仕様や部品を増やすと車両自体が重くなり、結果として積むことのできる積み荷(最大積載量)が減少してしまう。そこをどう折り合いをつけるか。今回のケースでは材料にステンレスを使用することや天蓋装置を取り付けること、またカッコよく見せるための飾り部品等が重量増につながりましたが、強度や求められる機能をクリアしつつ、少しでも多く積めるようミリ単位で部材や構造を削ぎ落とす検討を繰り返してくれました。

03乗り越えた瞬間

道路運送車両法(保安基準)と顧客要望との狭間で、最適解を探る。

  • ― ダンプトラックの設計にはさまざまな要素が関わってくるのですね。
  • M.K.

    もちろんダンプトラックについても公道を走るからには、ルールに適合した中で製作をしなければなりません。そのルールとしては、「道路運送車両法の保安基準」というものがあり、そこに定められた様々な基準をクリアし、初めて公道走行可能な車両として認められます。基準の一部には、車両に付帯するランプや反射板に関しての視認性基準が厳格に定められたものもあり、設置場所や設置角度が細かく決められています。お客様側からは「壊れにくいように奥に付けたい」「作業の邪魔にならないところに付けて」と要望されますが、その通りに設置すれば車検に通らない場合もあります。基準を満たしつつ、かつ顧客の要望に最も近い代替案を模索することになります。

  • M.D.

    我々にとってもうひとつ課題となるのが、法改正です。受注から完成までの間に、法規制の変更があった場合に当初の仕様から変更が必要な箇所が出てくるケースがあります。バックカメラの義務化や安全装置の基準など、それらの条件にも適宜合わせていく必要があります。

  • M.K.

    法規制とお客様の要望の狭間で、ここしかないという落とし所を見つけること。いかにしてお客様に納得してもらえる代替案を提示できるか、営業と設計がタッグを組んでこそ実現できることだと思っています。

  • M.D.

    最後にもうひとつ、ダンプトラックってお客様にとっては「愛車」なので「かっこよくしたい!」という要望が出てくるんですね。もちろんこれにも応えなくてはなりません。いろんな課題をクリアしたうえで、最後に私たちが悩まされるところです。今回のプロジェクトでもそうした課題がつぎつぎと噴出するなかで、粘り強くお客様に提案を続け、ようやく最終的な仕様を確定しました。ご相談をいただいてから長い歳月をかけ、無事に納車することができたのです。

04ミッションコンプリート

次代の物流をダンプトラックで支えたい。

  • ― 完成したときは、どのようなお気持ちですか?
  • M.K.

    自分がイメージして描いた通りにカタチになり、「かっこいいのができたな」って思ったときはやりがいを感じます。

  • M.D.

    出来上がったものが世に出る喜びはやはり大きいですね。新車を納品するときは「満足していただけるかな?」と、ちょっと不安もあってドキドキするのですが、実際に使っていただいて「このダンプいいね」と言っていただけると、本当に嬉しいですね。実際にダンプが荷物を積んで町を走っているのを見るのも大好きです。社会貢献というと大げさかもしれないですがモチベーションが上がりますし、またがんばろうと思えますね。

  • M.K.

    これからのトラックについても考えますね。ドライバー不足、交通事故の減少、CO2排出量の削減といった大きな社会的課題にも我々新明和の「技術」で対応することができると考えています。シャシメーカー(走行装置部分のメーカー)と協力し、ダンプの積込・排出作業を含めた自動運転やEVトラックへの対応、AIやIoT等の技術を活用したさらなる輸送効率化に向けて、誰も思いつかないようなダンプトラックを開発していきたいですね。

  • M.D.

    営業でお客様と接すると、社会のニーズがどんどん変化していることを肌で感じます。「トレーラーは持っていなかったけれど、人材不足だから要るかな」とか、「人件費がかかるから自動で土砂を運んでくれるダンプ作ってほしいね」といったご要望もいただきます。いままで以上に情報収集を徹底し、変容するニーズをいち早くキャッチして、既存のものにとらわれない製品開発をしていくことが必要だと思います。新たなニーズに応える画期的で新しい提案をしていけるようがんばります。